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国内旅行しよう

バンコクから南西方面へ車を走らせて、遅い夏休みを取った。何度も来ているホテルの駐車場に車を停めて、カバン一つでロビーへ向かう。久しぶりの小旅行に心が弾んでいたものの、静まり返ったエントランスには誰もいなかった。ドアの横で机に座っていたスタッフが私に気づいて、慌てて赤外線温度計を持ってくる。

「サワディーカー。ウェルカム、サー」

彼女は精一杯の笑顔で検温し、ロビーの中にいるスタッフに手を振って客が来たことを知らせた。すると慌てたドアマンがドアを勢いよく開けて、私の小さなカバンを持とうとする。私は大丈夫ですと言い、誰もいないロビーの受付でチェックインを済ませた。受付の女性はいつもと変わらぬ親切な対応をしてくれたが、閑散としたロビーを見渡す私にきごちない笑顔を見せた。

観光業が大打撃を受けていることは熟知しているつもりだった。しかし実際に足を運んでみて、予想以上の厳しい状況を目の当たりにした。プールサイドもビーチも静けさに包まれていた。平日であることを考慮しても驚きを隠せなかった。

ところがそんな状況でも、ホテルのスタッフは誰もがキビキビと働き、常に気持ち良い笑顔で接してくれて、感動するほど素晴らしかった。コロナ対策もしっかりしていた。例えば朝食のビュッフェは客が皿を持って料理を取る方式ではなく、各セクションにスタッフがいて客が選んだものを手渡す方式が取られていた。

金曜日になるとタイ人客が増えた。静かだったレストランが少し活気を取り戻し、忙しそうに動くスタッフはとても生き生きして見えた。彼らは観光回復を何よりも願っている。一刻も早く世界中でウィルスが終息しますように。そんなことを改めて願いながら、私はリラックスした時間を過ごすことができた。

外国人観光客がタイに入国できるのは、早くて来年の見通しだ。それまでの間、時間を作って国内旅行をしようと思う。タイ国内のコロナウィルス感染者数はほぼゼロで推移しているし、ホテルの宿泊費はどこも例年より割安になっている。さらに、これはホテルが望むことではないが、宿泊客が少ないのでプールもビーチも空いていて静かだ。人気のあるパタヤやバンセーンは賑わっていると聞くが、他の多くの地域は厳しい状況が続いている。微力ではあるが、それらの地域を訪れることによってホテルや飲食店が少しでも活気づいてくれたらと思う。

カバン一つで気軽に行けるのも国内旅行の良いところだ

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